網膜色素変性症の「も」の字も知らずに過ごして
網膜色素変性症の患者数はおよそ5万人といわれていますが、この数値は眼科医から網膜色素変性症であるとの診断を受けた患者の数から推計して得られた数字であります。
従ってまだ診断を受けていない網膜色素変性症の「予備軍」はかなりの数に上るとみられています。
かくいう私も人生50有余年を網膜色素変性症の「も」の字も知らずに過ごしてきました部類ですので、つい一昨年までは網膜色素変性症の患者数には含まれていなかったこととなります。
実際に、これまで全くに晴眼者として暮らしてきて、どうにも目の見え方がおかしいことに気付いて眼科で診察を受けたら、聞いたこともない「網膜色素変性症」とかいう眼の病気だと診断された、という患者さんは多いようです。
最近では、盛んに視力矯正の方法として喧伝されているレーシック手術の予備検診を受けて、網膜色素変性症であることが分かったという患者さんも増えているようです。
視力を良くしようとレーシックに行ったのに、特定疾患の難病が発覚してしまうのも、言い表し難いブラックジョークのようですが、現実にはよくあるケースらしいのであらためて驚いてしまいます。
その上、治療して治る病気ではないらしい、治療方法はないみたい、さらに、ことによったら失明するかもしれない、遺伝する可能性も高い、などといきなり告げられたらお先真っ暗になってしまいますよね。
網膜色素変性症を何処で吹っ切るか
全く知らずに人生を送ってきて青天の霹靂の如く光が奪われ、子供にも影響するかもしれない難病だったなんて、どう考えても不条理だ、ということで悲観し過ぎて鬱病に罹ってしまう網膜色素変性症の患者さんが多いそうです。
失明する割合は網膜色素変性症の罹患者数からみれば何パーセントというレベルなのだそうですが、患者さんの体験記などでもよく見かけるように、晴眼者と変わらぬ視野と視力を有しながらも、網膜色素変性症の発症とともにどんどん視野も視力も落ちていって、わずか4~5年の期間で失明してしまった、というようなケースを聞いてしまいますと、募る不安感はやはり甚大なものがあります。
特定疾患受給者証を保健所に申請して交付されれば、網膜色素変性症だと公的に認定されたことになりますが、続いて障害者の認定をどうするのか、という問題が待ち受けています。
もちろん申請するのもしないのも患者さんの自由ですから自己判断で構わないわけですが、選択肢としてはけっこう悩む場面でもあるんですね。
と申しますのも、障害者の認定を受けてしまえば運転免許などを手放さなければならない事態も生じますし、なにより「障害者」となることに大きな抵抗を覚える患者さんも数多くいらっしゃるようです。
さらに認定される障害者の等級が下位であれば、さほどの「メリット」も得られない、という側面も見逃せません。
かように罹ってしまえば治療方法もないことだけでも頭が痛いのに、考えなきゃいけないことも突如眼前に噴出してくるようで、まったくもって地団太でも踏みたい心境に陥ってしまいますが、それでも生きていかなければいけないのが人生なんですね。
ここしばらくは、一言で言ってしまうのも語弊がありそうですが、網膜色素変性症を何処で吹っ切るか、がポイントなのかな、などと思っています。




