急に利き目である左目の視界がぼやける
私の場合、網膜色素変性症は脳梗塞とセットになってやってきましたので、網膜色素変性症の症状や兆候なのか、脳梗塞の後遺症や麻痺によるものなのか判断がつかないことがありました。
網膜色素変性症の兆候として知られる夜盲症と色覚異常はひとまず措くとしても、視野狭窄に就いては脳梗塞の後遺症にも同様の症状が現れることがあるため、果たしてどちらの影響が出ているものか難渋してしまったこともありました。
進行が止まることはあっても回復や治療法のない網膜色素変性症に比べて、同様に全快することはないと言われる脳梗塞の後遺症ですが、リハビリテーションの進歩によって、かなりの部分まで機能回復することは可能になっています。
その機能回復の進捗度合いは一直線に良くなることは少なくて、良くなってはまた少し後退して、の繰り返しを経ながら徐々に改善度合いが進むことがほとんどです。
その改善途中の小休止状態のときにコンディションが悪いことが重なりますと、ひょっとしたら脳梗塞が再発したのではないか?と勘違いしてしまう具合の悪さが現れたりします。
私の場合も退院後1年ほど経って車の運転中に急に利き目である左目の視界がぼやけ始めて大いに慌てたことがありました。
家に辿り着いて考えてみればその3日ほど前から麻痺の残る左足の動きもぎこちなく、左目は意識して目いっぱい力を込めていないと閉じてしまいそうなほど垂れ下がってくる感じがします。
募る不安に食欲もなくなって取り敢えず脳梗塞で入院した折にお世話になった神経内科医に連絡を取って状況を伝えて診て貰うことにしました。
目は網膜色素変性症の悪化か!
この段階では脳梗塞の再発を第一に疑いながらも、もしや網膜色素変性症の症状が急進行しているのではないか?とも案じていました。
神経内科医の診察ではやはり脳梗塞の再発の可能性が高い、ということで検査のため入院手続がとられます。
1年経たずの再発、入院にがっくりしましたが、再発した割には症状が重くなっていない気がしましたので、不幸中の幸いだとほんの少し安心感もあったことを覚えています。
入院準備も終ってベッドで夕食を待っていたところ、神経内科医に呼ばれました。何か悪い知らせでも?と心配顔で処置室に行きますと、MRIとCTスキャンの画像を見せられた上で、何と脳梗塞の兆候はない!とのお告げです。
?マークが頭の中を行き来する中にも、再発ではなかった喜びが満ちてきました。
どこにも脳梗塞の再発を示す痕跡が見当たらないのだそうです。
では、脚の不調は何だったのでしょう?
恐らくは一時的な改善途中の停滞期だったことと、コンディションの不調が重なったものであろうとのご託宣です。
それでは、目はやはり網膜色素変性症の症状の悪化だったのか!と想像していますと、これもまた思わぬお言葉が神経内科医から発せられました。
「顔面神経麻痺」だとの診断でした。
脳梗塞の麻痺ではなくて、関連性は全くないとは言えないまでも恐らくは無関係な一時的な顔面の麻痺症状であろう、とのことです。
広がる安堵感と何故か自分が妙に可笑しくもありました。
治療は目薬だけのお手軽さで、念のための1泊2日入院で無事帰還を果たすことが出来ましたが、大事に至らず良かった良かったと思う反面、顔面麻痺が起こった経緯が不思議で仕方ありません。
不思議な気持ちは残したまま、次の日には見事に左目の垂れ下がりも解消へ向かい、2~3日もすれば大騒ぎしたことすら忘れてしまうほど、利き目の調子も足の運びも元通りとなりましたが、生まれて初めて味わった不思議な顔面麻痺の感触だけは良く覚えております。




