ぶつかるまで分からない
網膜色素変性症だと分かるまでも、近い範囲が見えていない、
という視野狭窄の症状はそれと認識しないまま、自分でもよく
分かっていたつもりでした。
網膜色素変性症で視野狭窄と申しますと、障害のレベルにも
よりますが、進行した状態ですと、3度とか5度の世界です。
3度しか視野がない場合にはどういう見え方をしているかと、
例えるなたばストローを覗いているようなものの見え方をしている、
とよく言われています。
現在の視野はそこまでは狭くなっていませんので実体験ではない
のですが、多少の視野狭窄のある私には直感的に分かるたとえ話です。
網膜色素変性症の兆候を表現するのに、足元のゴミ箱によく躓く、
とか歩いていて人とぶつかりそうになる、というのも良く引き合いに
出されますが、私の場合でいえば、それよりも顔の直近の障害物に
当たるまで気が付かない、というのが最も多くなっています。
分かりやすく申しますと、つい先日も経験したことですが、部屋に
置いてあるヒーターのホコリとハンディモップのようなものでとって
いまして、ヒーターの下部を拭取ろうと手を伸ばした瞬間に、ヒータ
ーの近くにあった椅子の背もたれにあごと唇をしたたか打ち付けて
しまいました。
晴眼者の人ならホコリ取りをしながらでも視野の端に椅子が見えてい
るのでしょうが、視野が健常者に比べて狭くなっている私には見えて
いないので、ぶつかるまで分からないわけです。
正面は見えても顔の周りが
手近な障害物が見えにくい傾向はずっと以前からあったようです。
昔から見えていないことを囃された覚えもありますし、ロービジョン
ケアでいうところの始終視点を上下左右に動かして出来る限り広い
範囲の視覚を得ようとする、スキャニングの技術を駆使しない限りは、
同様の失敗は防ぎようもないことも分かっております。
無論、自身が網膜色素変性症と知るまでは視野狭窄という言葉すら
知りようがありませんでしたので、視力の悪さと動体視力の能力が
健常者よりもはるかに劣っている結果だと自己診断していました。
運転免許の視力検査には矯正視力ながら合格する視力はあるわけで
すから、正面方向の見える力は有していても、顔の周りが見えていな
い、という普通の視力を有する人にはちょっと分かり難い眼の持ち主
なのです。
ロービジョンケアのスキャニングを絶えず心がけていれば、あまり
失敗はないのですが、おおむね顔を机や椅子にぶつけてしまう時は、
眼を活発には動かせていないような、たとえばパソコンを一定時間
使った後ですとか、半分寝たような精神状態で部屋で何かをしようと
した時が圧倒的に多くなっています。
常に気を張って行動することが大切になってくるのですが、人間そう
そう緊張状態が持続するものでもありません。
もちろん屋外に出ている場合にはそんな暢気なことは言ってはおれま
せんが、ついうち家の中だと気が緩んでしまうのでしょうね。
転ばぬ先の杖。
ぶつける前にスキャニング、です。




